斬る

「斬る」 1962
原作柴田錬三郎、監督三隅研次、主演市川雷蔵といえば、以前見た「眠狂四郎 勝負」と同じ組み合わせだが、今作は眠狂四郎シリーズではなく、短編をベースにした剣豪物である。1968年の岡本喜八監督の映画とはタイトルが同じであるが、一切何の関係もない。
自身の出生の秘密を知った若き剣士は、数奇な運命に翻弄されることとなる。
「眠狂四郎 勝負」でもそうだったが、相変わらず三隅監督の画面構成は美しい。今作での市川雷蔵は眠狂四郎とは違い登場時は普通の好青年といった印象だが、その表情から笑顔が消えだんだん剣豪っぽくなっていくところが、運命の厳しさを物語っている。
とはいえストーリーはいまひとつで、場当たり的な展開を繰り返していて、あまり主人公に感情移入できないのだよね。元々が短編ということなので、エピソードを膨らませなければならなかったのかもしれないが、もう少しなんとかならなかったのか。
冒頭でいきなり主人公は旅に出たいと言い出すがその目的も不明、旅に出るもその間の描写はなしで、3年後に帰宅する。その後の妹との会話では主人公は剣術とはあまり関係なさそうなのに、なぜか他藩の剣客との試合に呼ばれて、その強さを披露することになる。
まぁ観客としては主人公が市川雷蔵なので、強いだろうなとは思っているわけだが、まずその強さの描写をしておくべきだろうし、妹との会話のちぐはぐさはいったい何だったのかという疑問しか残らない。そもそも旅に出る目的を剣の修行のためと描写しておけばいい話なのでは?
出生の秘密を知り流浪の旅に出る後半は悪くないが、ラストはちとあっけない。そこに至るまでにもう少し派手な立ち回りがあっても良かった気はする。
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