動くな、死ね、甦れ!
「動くな、死ね、甦れ!」 1989
Amazonで見かけて、ずっと気になっていたやつ。斬新なタイトルに惹かれたものの、監督も役者も知らないロシアがまだソ連だったころの白黒映画ということで、買うかどうかはかなり迷った。2000円くらいだったら即買ったのだけど、4000円越えだったのでねぇ。ただこういうマイナーな作品のブルーレイは、すぐに廃盤になって中古にも高値がつくというようなことはよくあるので、半年くらい迷った末に結局買ってしまった。
主人公は、カバー写真の少年ワレルカと少女ガリーヤである。第二次世界大戦直後のソ連の炭鉱町に住む彼らの日常を描く。ストーリーと言えるものはほぼない。悪童というにふさわしいワレルカの悪戯と意地悪されつつもいつもワレルカを助ける近所に住むガリーヤ。まだ恋とかそういう感情はなく、いつも遊ぶともだち同士にすぎない。やがてワレルカの悪戯はエスカレートして・・。というあらすじを読んだだけで、どんな映画なのか全く知らないままに見始めたので、最初から妙な緊張感を抱きながら見ていた。ストーリーの流れというものがなく、ただ2人のエピソードを断片的に提示していく演出は、緊張を緩和するどころかどんどん高めていくばかりで、目が離せなくなる。そしてあっけなくも唐突な幕切れ。まさに心をえぐるような映画だった。
途中で、「南国土佐をあとにして」という日本の唄が挿入されたので、???という感じになったのだが、そのあとに収容所の日本兵が登場したので、なるほど彼らが唄っていたということかと納得した。ロシア語の映画で日本の唄が流れるほど奇異に聞こえることはない。
とにかく、ワレルカ役の少年がうまい。いたずらっ子の不敵なガキ具合といい、バレそうになったときの怯えた感じといい、演技とは思えないほどの表情の豊かさがすごい。ガリーヤ役の女の子も同い年でありながらちょっとお姉さんぶった感じでワレルカを見る目とかすごくよい。こちらはまだ女優をやっているようだが、ワレルカ役の子は3年後の続編とさらにそのあとの作品に出たということしか情報がない。ググっても全然出てこないことから考えて、多分もう役者はやっていないのだろう。
監督のヴィターリー・カネフスキーという人は、31才から39才まで冤罪で投獄され、この映画を撮ったのは53才のときだそうだ。生まれはこの映画の舞台と同じ場所ということで、映画には自伝的側面もあるようだ。
それにしてもタイトルの意味が全くわからない。このタイトルだったからこそ買ってしまったくらい魅力的なタイトルなんだけど、なんでこんなタイトルなのだろう。しかも続編は「ひとりで生きる」というなんのひねりもない普通のタイトルなので、奇をてらったタイトルを付ける趣味があるわけでもなさそうだし、もしかするとロシアの慣用句かなんかなのだろうか?
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